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イギリスの教育システムとオックスブリッジ 〜2つの「カレッジ」〜

イギリスにおいて、「カレッジ」には主に2つの意味がある。

まずは一般的なイギリスの教育システム(カリキュラム)の流れと、1つめの「カレッジ」について解説する。





教育カリキュラムとカレッジ

日本で「カレッジ」と聞くと「大学」のことだと思う人は少なくないと思う。私の通っていた日本の大学も、英語表記では ‘College’ が付いていた。これはアメリカ式に倣ったものだと思うが、イギリスでは ‘College’ と ‘University’ は別物で、’College’ は大学のことではない


イギリスには、公立校、私立校、宗教理念を基盤とした学校、寄宿学校など、様々な形態の学校があるが、ここでは、まず一般的なイギリスの教育制度と流れについて説明したい。



名称

学年

対象年齢

年数

日本で例えると

ナーサリー


~4


保育園 or 幼稚園

レセプション

Year R

4~5

1

小学校の準備学級

プライマリー・スクール

Year 1-6

5~11

6

小学校

セカンダリー・スクール

Year 7-11

11~16

5

中学校

シックス・フォーム or カレッジ

Year 12-13

16~18

2

高校 or 専門学校

ユニバーシティー


18~


大学



義務教育は、プライマリー・スクールとセカンダリー・スクールの11年間だ。


セカンダリー・スクールが16歳までなので、日本での高校1年生頃までが義務教育となる。小学校のスタートも1年早いので、日本と比べて義務教育期間は2年長いことになる。多くの子どもはレセプションにも通うので、事実上、日本の子どもたちより3年間長く初等・中等教育を受けていることになる。

レセプション(スコットランドを除く):Early Years Foundation StageEYFS: 早期基礎段階)の最終学年。プライマリー・スクールでの1年目にプログラムされている(本格的な学習の始まるYear 1の前年に、Year Rとして)。



厳密には、18歳までは、何らかの方法で教育を継続する義務がある(イングランドのみ)。しかし、セカンダリー・スクールの過程を終えた後に、カレッジ等へ進学しなければならないという法律はない。



セカンダリー・スクールの後、大学進学などを希望する人は、通称「シックス・フォーム」または「カレッジ」へ進む。



Sixth Form(シックス・フォーム):
セカンダリー・スクールに付属している「シックス・フォーム」と、独立した「シックス・フォーム・カレッジ」のことを指す。


College(カレッジ):
主に「Further Education CollegesFE: 継続教育)」と呼ばれるカレッジのことを指す。シックス・フォームでは扱わない専門的なコース(芸術、デザイン、農業、テクノロジーなど)もあり、専門学校としての要素もある。



「シックス・フォーム」は基本的な進学校としての要素が強く、「カレッジ」は学術的な分野以外も広く扱っている。


「シックス・フォーム」と「カレッジ」では、大学進学に必要なAレベル』や『国際バカロレア(IB』などのプログラムに沿って学ぶ。特にカレッジでは、他の選択肢が色々とある場合もある。生徒は、希望する大学の要項や、将来の目的に合わせて、コースや科目を選択することになる。



イギリスの教育が見えてくるおすすめの本:

子どもはイギリスで育てたい! 7つの理由――住んでわかった。子育てと教育から見える日本へのヒント

浅見実花(著)

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ(著)




オックスブリッジとカレッジ

2つめの「カレッジ」の意味は、俗に言う「オックスブリッジ」の「カレッジ」だ。


オックスブリッジとは、イギリスの2大名門大学「オックスフォード大学」と「ケンブリッジ大学」の併称である。この2つの大学は、世界中の他の大学とだけでなく、イギリスの他の大学とも、あらゆる点で異なる。今回その全てを解説することはしないが、その中で最も有名でユニークなポイントが、「カレッジ」制にある。


オックスフォード大学には45のカレッジ、ケンブリッジ大学には31のカレッジがある(2021年現在)。それぞれのカレッジは、個々の自治組織それぞれのカレッジに、学生寮、休憩室、カフェやバー、図書館やコンピューター施設、オフィス、ジム、体育館、公園、チャペル、保健室などがある。


オックスフォード大学とケンブリッジ大学は、それらカレッジの集合体なのだ。オックスブリッジの受験生は、大学そのものではなく、カレッジを選んで受験する。


それぞれのカレッジに、それぞれの歴史、得意分野、建物・施設・公園などの風合いや規模、学生の雰囲気、そして予算がある。人気のあるカレッジから、すべり止めとして選ばれるカレッジ(難関オックスブリッジには変わりない)まで、様々だ。


余談だが、今上天皇はオックスフォード大学のマートン・カレッジへ留学され、「テムズ川の水運史」を研究されていた。1993年に回顧録『テムズとともに 英国の二年間』を著されている。普通の大学生と同じように青春を謳歌されたというオックスフォードでの2年間は、自由でかけがえのない、幸せな時間だったそうだ。


徳仁天皇() テムズとともに 他

テムズとともに -英国の二年間-

水運史から世界の水へ

The Thames and I: A Memoir of Two Years at Oxford

The Thames and I: A Memoir of Two Years at Oxford


オックスフォード大学(とケンブリッジ大学)の教育についてもっと知りたい場合は、この本が面白い。

なぜオックスフォードが世界一の大学なのか

コリン・ジョイス(著)


著者のコリン・ジョイス氏は、自身もオックスフォード大学出身だが、日本在住歴が長く、この本も日本人読者向けに書かれている。一流大学が一流である理由が、よく分かる。また同時に、イギリス社会に今なお無くなったとは言い難い階級問題などの背景についても触れていて、興味深い。



・・・



以上が、イギリスにおける、2つの「カレッジ」の意味である。


①高校・専門学校としての「カレッジ」
②オックスブリッジを形成する「カレッジ」


日本にはない存在・概念なので、面白い。国や学校によって、教育というものは、こんなにも違う。




Manami


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