2021年7月現在、UEFA EURO 2020(欧州選手権) が開催中で、ヨーロッパ中が大盛り上がりを見せている。UEFA EURO 2020とは、ヨーロッパ各国の代表チームによるフットボール(サッカー)大会で、今年は16回目。24のチームが争う。当初は2020年に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染症の流行により今年に延期されたのだ。
イギリスからも、イングランド、ウェールズ、スコットランドが出場しているが、北アイルランドは欠場した。私はイングランドに住んでいるので、イングランドを応援している。
今年のイングランドは強く、
6月13日 対クロアチア 勝利 1-0
6月18日 対スコットランド 引き分け
6月22日 対チェコ共和国 勝利 1-0
6月29日 対ドイツ 勝利 2-0
7月3日 対ウクライナ 勝利 4-0
と勝ち進んでいる(スコットランド戦は引き分け)。
次回は7月7日(水)20:00(イギリス時間)/ 8日(木)04:00(日本時間)からの準決勝、対デンマーク戦だ。準決勝まで進んだのは、イングランド、デンマーク、イタリア、スペインの4チーム。
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さて、私はフットボールに詳しいわけではないので、試合の解説などはできない。今回ご紹介したいのは、イングランドのフットボールに欠かせないある「歌」なのだ。
EURO 2020 が開始されてから、同じ歌をよく耳にすることに気がついた。熱狂的なファンはもちろん、小さな子どもたちまで肩を組んで合唱しているではないか。
この歌は、イギリスで初めて同じアーティストが4回1位を獲得したという、名誉あるシングル曲だ。1996年にリリースされた。
事実上のイングランド公式応援歌
‘Three Lions (Football’s Coming Home)’ – Baddiel, Skinner and The Lightning Seeds
おそらく今回のEURO 2020にあわせて、HD版がオフィシャルからアップされていた。
コメディー番組から生まれたこの歌は、イングランド中の人々の心を掴み、25年経った今でもファンの間で特別な存在となっている。大きなフットボール大会があると、いつも歌われているそうだ。
この歌が作られたのは1996年。イングランドがW杯で金のトロフィーを持ち帰った1966年から、30年が経っていた。イングランドのサポーターは、「’66年以降、全てのゲームにがっかりさせられてきた」そうだ。なかなかの言われようだが、フットボール発祥の地であるイングランドの人々にとっては、それほど受け入れ難い屈辱的な年月だったようだ。
そんな1996年、リヴァプールのバンドであるライトニング・シーズ(のイアン・ブロウディー)と、コメディアンのフランク・スキナーとデイヴィッド・バディールが共同で制作したのが、この ‘Three Lions (Football’s Coming Home)’ だ。
スリー・ライオンズ (フットボール・イズ・カミング・ホーム)
この歌の面白いところは、スポーツの応援歌でこんなことあっていいのかというほど悲観的なところだ。もちろん完全に希望を捨ててはいない内容になっているが、とてもシニカルでイギリスらしい。
内容としては、基本的に「フットボールが俺らのホームに帰ってくるぞ」と歌っている。「帰ってくるぞ〜!」という楽しげな感じではなく、「帰ってきてくれ、お願いだから」という悲願だ。
It’s coming home
It’s coming home
It’s coming,
Football’s coming home
It’s coming home…
元々、この歌詞はもっと悲観的だったようで、FA(サッカー協会)からの申し入れで変更した部分がある。例えば、‘They don’t know how to play’ (彼らはプレーの仕方を知らないんだ)は、 ‘But I know they can play’ (でも彼らがうまくプレーできることは分かってるんだ)になった。
タイトルにもなっている ‘Three Lions’ とは、FAイングランドのエンブレムで、ユニフォームのシャツに描かれている。
面白さを伝えたくて、歌詞を訳してみた。
It’s coming home
帰ってくる
It’s coming home
帰ってくる
It’s coming,
帰ってくるぞ、
Football’s coming home (we’ll go on getting bad results)
俺らのフットボールが (どうせ負けんだろ)
It’s coming home…
帰ってくる・・・
Everyone seems to know the score
みんな分かりきってるんだよ
They’ve seen it all before
前に何度もあったからさ
They just know
どうなるかは分かってる
They’re so sure
分かってるんだ・・・
That England’s gonna throw it away
イングランドは台無しにするって
Gonna blow it away
思いっきりね
But I know they can play
でも本当はやれるってことを知ってるんだ
‘Cause I remember
だって覚えてるから・・・
Three Lions on a shirt
三頭のライオンがシャツにいる
Jules Rimet still gleaming
ジュール・リメはまだ輝いてる
Thirty years of hurt
30年の苦しみ
Never stopped me dreaming
夢は諦められない
So many jokes, so many sneers
多くのジョークに、多くの冷笑
But all those oh-so-nears
でもその全ての「惜しい」は
Wear you down
俺らをがっかりさせてきた
Through the years
何年もね
But I still see that tackle by Moore
だけどまだ忘れられないんだ、ムーアのタックルを
And when Lineker scored
リネカーのゴールを
Bobby belting the ball
ボビーの力強いキックを
And Nobby Dancing…
そしてノビーのダンスを・・・
ジュール・リメ:1970年までワールドカップの優勝チームに贈られていたトロフィー
ムーア・リネカー・ボビー・ノビー:過去の名選手たち
書きながら笑ってしまった。こんな応援歌ってあるだろうか。でも何でだろう、こんなに切ないのに・・・フットボール愛とか、チームのことが大好きなんだなっていうのが、すごく伝わってくるんだよな・・・
繰り返される ‘It’s coming home…’ からは、イングランド人の打ち砕かれたプライドと苦痛と失望と悲願そして希望が、うねるようにして伝わってくる。
ロンドンの教会で試合を中継していた
どれほど国民の関心が高いのかが窺える |
半世紀を超えて
1966年W杯での栄光から、今年で55年。イングランドは未だ、トロフィーを手にしていない。欧州選手権では、決勝に進出したことさえない。明日、イングランドは、EURO 2020 準決勝だ。準決勝に進出するのは、1968年、1996年に続く、3度目となる。55年後の真実となるのか・・・期待が高まる。
イングランド × デンマーク
7月7日(水)20:00(イギリス時間)/ 8日(木)04:00(日本時間)
これは目が離せない。
さあ歌おう。
♪
It’s coming home… it’s coming…, football’s coming home!
Manami
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