今初夏、オックスフォード大学のフォーマルディナーへ行ってきた。今回訪れたのは、オックスフォード大学のモードリンカレッジだ。
オックスフォード大学
ハリー・ポッターのロケ地としても有名なオックスフォード大学。最近では、新型コロナウイルスワクチンの開発も記憶に新しい。
オックスフォード大学は、英国イングランドのオックスフォードにある。世界で3番目に古く、英語圏では最古の大学だ。正確な創立日は分かっていないが、1096年から講義が行われていたという記録が残っており、1167年から大学として一気に発展した。
オックスフォード大学は世界有数の名門大学であり、世界大学ランキング(The World University Rankings – Times Higher Education 2022)では、6年連続の1位を獲得した。イギリス国内だけでなく、世界各国の政治家や著名人を数多く輩出している。イギリスの歴代の首相55名のうち、28名がオックスフォード大学出身である。(14名がケンブリッジ大学出身)
オックスフォード大学についてはこちらの記事でも簡単に説明している。
特にオックスフォード大学とケンブリッジ大学の「カレッジ制」は特殊で興味深いものだ。上記事でも触れているが、オックスフォード大学についてはこちらの本が面白い。
コリン・ジョイス(著)
入学までのプロセスや、教育方法、卒業試験に至るまで、いかにして優秀な人材を見つけ、そして育てていくのかという、知られざるその内側を垣間見ることができる。
世界中を見ても、オックスフォード大学と制度的に共通点があるのは、ケンブリッジ大学しかないようだ。オックスフォード大学とケンブリッジ大学は似たもの同士ということで、通称「オックスブリッジ」とも呼ばれる。
モードリン・カレッジ
さて、今回訪れたのは、モードリン・カレッジ(Magdalen College)だ。
カレッジについてはこちらの記事でも説明しているので是非ご一読いただけたらと思うが、オックスブリッジ特有のものになる。
モードリン・カレッジは、オックスフォード大学に45あるカレッジのうちの一つだ。創立は1458年で、12番目に古いカレッジとなる。古い歴史と壮麗な外観、鹿のいる広大な庭、川や池、その他いくつもの優美な中庭のあるモードリンは、学生にも観光客にも人気なカレッジだ。
学部生が住んでいるニュービルディング
かつてC.S.ルイス(ナルニア国ものがたり)も住んでいた |
鹿のいるカレッジ内の公園 – ディアパーク |
フォーマルディナー
フォーマルディナーとは、各カレッジのダイニングホールで行われる晩餐会のことだ。ダイニングホールは、ハリーポッターのあれをイメージしてほしい。
以下、オックスフォード大学のフォーマルディナーについて、世界一分かりやすく解説する。
開催頻度
カレッジによる。モードリンでは、学期中に週3回開催されている。
参加条件
一緒に食事をするグループの中に、一人はそのカレッジに所属する学生が含まれていることが条件となる。完全予約制なので、その学生が事前に予約をとる。モードリンのフォーマルディナーでは、学生は大学のガウンを羽織ることになっている。
フォーマルディナーの種類
カレッジによるが、通常のフォーマルディナー、日曜のサンデイ・フォーマル、クリスマスディナー、などがある。モードリンでは、ディアパークにちなんで、年に一度、鹿肉が出される晩餐会がある(カレッジのディアパークにいる鹿ではない。ディアパークの鹿は食用ではなく、ひたすらのんびり暮らしているようだ)。
料理とドリンク
フォーマルディナーの種類によって品数は変わるが、その日によって決められたコース料理となる。通常、ワインなどのドリンクは提供されないので、持ち込むことができる。サンデイ・フォーマルなど、よりフォーマルな晩餐会では、ワインも提供される(その際、ワインに追加料金はかからないが、コースの価格が少し高く設定されている)。アレルギーなどで避けてほしい食材がある場合、またヴィーガン希望の場合は、予約時に指定できる。
価格
ディナーの種類やコース内容による。モードリンでは、10〜30ポンド(約1500〜4500円)ほど。レストランへ出かけるよりも安くコース料理を楽しめるので、学生に人気なのだ。
ドレスコード
Smart:
通常のフォーマルディナーでは‘Smart’。男性であれば、必ずしもネクタイやベストで完全なフォーマルスタイルにする必要はないけれど、多少カジュアルでもいいので、スーツか、シャツやジャケットを着ておくのが無難、といったレベルのドレスコードだ。女性であれば、洒落たレストランに行く時のような、ワンピースやドレス、’Smart’なパンツスタイルでも大丈夫。
Black Tie:
Black Tie(ブラック・タイ)指定の場合は、更にフォーマルにする必要がある。男性はタキシードに蝶ネクタイ、女性はイブニングドレスなどが基本。
ハイテーブル
ダイニングホールには、一段高い位置にあるハイテーブルがある。ホールの一番奥にあり、テーブルの向きも、他は全て縦向きなのに対して、横向きになっている。ここにはカレッジ長であるプレジデント、教員、また招待された人(学生が招待されることもある)のみ座ることができる。
ハイテーブルのメンバーが入室する際は、ダイニングホールにいる全員が即座に沈黙し、起立しなければならない。その流れで、ハイテーブルのメンバーの中で最も地位の高い人がラテン語で祈りを唱える。ハイテーブルのメンバーが着席したら、他の参加者も着席してまた会話を始めることができる。
ハイテーブルのメンバーが退室する際は、入室の時と同じように、参加者全員が沈黙・起立する。ハイテーブルのメンバーがホールを後にした瞬間に、元に戻ることができる。
ちなみに、ハイテーブルのメンバーは一般の出入り口は使わずに、ハイテーブルに近い扉から入退室する。
フォーマルディナーの流れ
モードリンのフォーマルディナーは、19:10に始まる。遅れると、入れなくなる。ヴィーガンなど先に指定していた人は、受付時にカードを受け取り、テーブルに置く。料理の提供は一斉に行われる。提供が早すぎたり、遅すぎたりすることはないが、個人のペースには合わせられない。食事が終わったら、自由に帰宅する。
・・・
長いロックダウンが解除されて2ヶ月ほど経ったころ、夫、義父母とフォーマルディナーへ参加した。コロナ以前は、もっと席の間隔は狭かったそうだ。今は仕切りもあり、安心して食事することができた。ワインの提供はないため、持ち込んだ。コース内容はパン、前菜、メイン、デザート。価格は一人10ポンド!味は、普通。前菜のムースが美味しかったかな。全体的に悪くはないが、味よりも、オックスフォード大学のダイニングで食事するという、滅多にない体験、その雰囲気を楽しむものだと思った。
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