先日、初めてウェールズに行った。
ウェールズに入った瞬間に公用語は二つとなり、看板も、英語とウェールズ語で書かれている。英語(イングリッシュ)は、つまりイングランドの言葉だ。ウェールズにはウェールズ語(ウェルシュ)がある。もちろん、現代では皆さん英語も話す。
この日、いくつかの素敵な場所を訪れた。
今日はその中から、パトリショウの「聖イッスイ教会」をピックアップする。
旅行サイトでもなかなか見ないであろう、マニアックなスポットになるが、ウェールズの歴史を肌で感じられるような、興味深い場所だった。
聖イッスイ教会 – The Church of St Issui
入るとすぐ、中世の聖水桶に出迎えられる |
聖イッスイ教会は、ウェールズのポーイス(Powys)というエリアの、パトリショウ(Partrishow)という小さな村にあり、1060年にはじめて建てられた。現存する建物は、主に14世紀〜15世紀に建てられたもので、1908年から1909年にかけて修復された。
・・・歴史・・・
その昔、イッスイという聖人がいた。
彼は教会の近くの井戸(後述)のそばに住んでいたそうだ。
しかしある日、イッスイは殺害されてしまう。
〜ここまでは長い間言い伝えられた歴史であり、伝説とも言える〜
その後、この井戸は巡礼地となり、1060年、巡礼者の供物によって、教会が設立された。
1188年、ジェラルド・オブ・ウェールズがウェールズを巡礼した際、この教会で説教をしたと言われている。
この教会は、現在も教会として活動している。
ジェラルド・オブ・ウェールズ(1146年~1223年)
ブレコン助祭長・歴史家。ノルマン人とウェールズ人の間に生まれる。ウェールズで様々な教会の任務に就いた。聖デイヴィッド大聖堂司教の候補者だったが、ウェールズの血が流れていることを理由に、選ばれることはなかった。当時のウェールズでは、イングランドからの侵略が進んでおり、政治的な力を持つ教会の重要な職にウェールズ人が就くのは、厄介だと思われていたからである。
見どころ①: ルード・スクリーン
この教会で最も有名なのが、ルード・スクリーンだ。1500年に作られた。ルード・スクリーン(Rood Screen)とは、教会などにおける、内陣と外陣の仕切りのこと。ウェールズの中世美術の中でも最も優れた作品のひとつとされていて、建築史家のリチャード・スコーフィールドとロバート・ハスラムは、「王国に現存する最も完璧でエレガントなもの」と評している。– ‘The Buildings of Wales’ : Powys
両端に施された、ドラゴンやワイバーンが蔓(または火)を吐く装飾は必見。
Ruth Sharville / St. Issui’s church Partrishow – detail from Rood Screen
(アップを撮り忘れていたので写真をいただいた) |
ルードスクリーンの奥、内陣では、イングランドからの侵略の跡が見られた。
ウェールズ語ではなく、英語で書かれた文字が並んでいる。ウェールズには、ウェールズ語の使用を禁止されていた時代もあるのだ。
見どころ②: 壁画
聖イッスイ教会には、いくつかの重要な壁画もある。
17世紀に描かれた壁画 |
ジェームズ一世のものであると考えられている、スチュアート家の紋章 |
主の祈り、十誡、使徒信条などの聖書のテキストも残っている。
見どころ③: 井戸
教会から少し下ると左手にあるのが、イッスイの井戸だ。巡礼者がお供え物や花を置くための台もある。伝説によると、6世紀に隠者であった聖イッスイが、この井戸のそばに住んでいた。彼はこの水を使って、地元の人々に洗礼を施したとされている。イッスイは旅人と親しくしていたが、ある時、彼のもとに身を寄せていた男に殺害されてしまった。その後、ここは巡礼地となる。
井戸のそばの木。おまじないのためか、色々なものがくくりつけらている。 |
中世になると、様々な病気を治すために巡礼者がこの聖なる井戸を訪れるようになり、それは19世紀まで続いた。
しかし今でも人々はここを訪れ、小枝で作った十字架を置いては、自分も奇跡的な治療を受けられるようにと願いながら水を浴びたり、幸運を祈るため、井戸にコインを投げ入れることもあるのだという。
本当にやっている人を発見!義父と義父の弟。義父はちょっと腰が痛い。 |
見どころ④: 教会の庭
Lichen(地衣類)が付くのは、空気が綺麗な証拠なんだとか |
ワイルドでアーティスティックな石塀
|
ウェールズへ訪れる際は是非・・・なのだが、ここへ来るには、細く入り組んだ道を車で走ってくる必要があるし、スマートフォンも圏外となる。イギリスでの運転に慣れている方や、現地の人と一緒に行けるといいのかなと思う。
Manami
Comments
Post a Comment